初心忘るべからず
9月に入り、空気の匂いが夏から秋に変化すると2019年の記憶が急に蘇ってきます。
2019年9月の金沢は、ジェラートを食べながら散歩したくなるような陽気が続いており、開業準備をしながら早くお店ができないかとわくわくしていたことを思い出します。
開業前やそのあとのことは、出来事として覚えていることはあっても、その時感じた想いは(恥ずかしながら)思い出そうとしなければ、なかなか思い出せないものです。

はじめて自分のレシピでジェラートを作ったのは東京に居るときでした。自分の考えたフレーバーが店頭に並び、誰かに選ばれたときのなんともいえない幸福感は、今でも覚えています。
あれから約4年。最近忘れかけていたあの幸福感を再び感じる出来事がありました。
仕事でお世話になった方へのプレゼントとしてジェラートを買ってくれた常連のお客さま。その方が渡したジェラートが、思わぬところでまた別の方を元気にしたという話。
「自分の作ったジェラートで誰かを元気にしたい」なんて思ったことはないけれど、「自分の作ったジェラートが誰かを元気にした」と言われることがこんなにも嬉しいのかと驚きました。
その話の最後には「プレゼントしたこちらまで嬉しかった」と常連さんから言われた時、あの時と同じような温かい幸福感に包まれました。
それと同時に、これまでかけてもらっていた声について、どこか当たり前のような気持ちで聞いていたような気がして情けなくなりました。
”初心忘るべからず”とは世阿弥の有名な言葉ですが、
全文は
”是非の初心忘るべからず。時々の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず。”
だそうです。
結局、初心は一生つづくもののようです。
日々思うことを少しずつ文字に残しておこうと思います。
初心を忘れないために…