寅さんが教えてくれたこと。
先日、友達と食事に行った時、自分の好きなものについて話をした。
どちらかというと好きなものは”狭く深く”だと思っており、語りだすと止まらなくなってしまう時がある。
しかし、いざ「好きなものって何?」と聞かれると色々と出てきた。
意外に自分には好きなものが多いことに気づかされ、ちょっと恥ずかしかった。
友達の分析によると、私は”推し”体質らしく、話を聞いていると腑に落ちた。
”推し”と聞くと、アイドルや有名人の追っかけみたいなイメージをしてしまうけれど、結局はなにかにハマっている状況と似ているのかなと思う。

私のたくさんある好きなものの一つが映画である。
若い時からたくさん映画を見てきたし、最近は昔ほど偏ることなく、色々なジャンルの映画を見るようになってきた。
ここ数年でドハマりしていて、ある意味、今の私の”推し”かもしれないのが、山田洋次監督の「男はつらいよ」に出てくる寅さんだ。
全50作ある「男はつらいよ」シリーズは、基本的にテキ屋稼業の寅さんが旅先で出会った美人に恋をして、家族や近所の人たちを巻き込んでいざこざを起こし、最終的に美人にフラれるか身を引くかして絶対に成就しない恋を繰り返すというストーリー。
寅さんはすごく”いい格好しい”なので、そのために周りはすごく迷惑を被ってるし、さらに結局恋が成就しなくて落ち込むから、それも周りがすごく気を遣っている。
ただこんなハチャメチャな人が主役で、ちょっと現代においては時代錯誤感が否めない映画ではあるけれど、人間ひとりでは生きていけないことを改めて思い知らされ、見るたびに温かい気持ちにさせられる。
寅さんを推しはじめてから、40代以降の男の人を見ると、たまにその人の中の寅さんな部分が垣間見れ、ちょっとニヤっとしてしまったり、20代から30代くらいの寅さん予備軍たちに出くわすと、今後が楽しみになる。
そしてたまに自分も「今の寅さんっぽいな…」と思う時もある。
今までは自分の中の”普通”から少し離れている人を見ると、ちょっと嫌だなと思ってしまっていたけれど、最近はちょっと違う見方ができてきている気がしている。
きっと自分も誰かの”普通”とは違ったことをしているだろうし、迷惑もたくさんかけていると思う。
とはいえ自分が思う常識は変えられないから、いつも少しだけ申し訳ないなという気持ちをもって生きていたいなと思っている。
