こども心、おとな心。
2月の初め頃、以前働いていた広告代理店の方から「こんなことをしているんだけど…」と相談を受けた。
”子どもの職場体験”
ご自身の子育て経験から子どもの頃にいろいろなことを見聞きする大切さを感じ、学校の職場体験とは違う距離感で”好き”を見つけてもらうスキクエストという取り組みだった。
私は幼稚園の頃、卒園アルバムの将来の夢にアイスクリーム屋さんと書いていた。
きっかけは、家の近所にアイスクリームの移動販売が来ていたが一度も買ってもらえず、その腹いせに「アイスクリーム屋さんになる!」と言っていた記憶がある。
実際、別のきっかけでジェラート屋になったけれど、幼い自分が理由はともかく、アイスクリーム屋さんになりたいと思っていたことが、今となっては必然だったように思えて嬉しくなる。
子どもたちに”将来ジェラート屋になってほしい”と思うわけではないけれど、幼い頃に経験したこと、感じたことが、大人になった時に思わぬ形で自分を語るストーリーの一部になるのではないかと思うので、そういう意味でも今回のお話は興味深く、依頼を受けることにした。
とはいえ、人に教えることはとても苦手で、子どもたちに何を伝えれば良いのか、どうやれば楽しんでもらえるかなど考えすぎた結果、答えが出ないまま当日を迎えた。

参加者は、小2から中1まで8名。
自分の頭の中では、初めに自己紹介やジェラート屋になったきっかけ、夢を持つことの大切さなどを流暢に語り、その後ジェラート作りのデモンストレーション、オリジナルカップ作り、ジェラート盛り付け体験を行ってもらおうと思っていたが、想像以上の緊張と準備不足で初っ端から躓き、その後立て直すこともできずに1時間のイベントは終了した。
落胆しながらも、子どもたちが帰った後、先程使ったカップを片付けようとすると、みんなが描いたオリジナルカップの出来栄えにくぎ付けになった。
子どもたちも少し緊張していたせいか、こちらの問いかけに恥ずかしそうに答える子が多かったが、自由に描いてもらった白いカップには、彼らの柔軟な頭と純粋な目で見たありのままが描かれていた。

その日は、イベントの後、通常営業だったので、自分の不甲斐なさと子どもたちの可能性を垣間見た感動を引きずりながら店に立っていた。
18時を過ぎた頃、思いもよらぬお客さんが来店した。
午前中のイベントに参加してくれた女の子だった。
お母さんの話では、イベント中は少し恥ずかしかったようだけど、家に帰ってからとても喜んでいて、娘さんから「また行きたい」と言われ、再び食べに来たとのことだった。
落ち込んでいた気持ちが一転、やってよかったなという気持ちに変わった。
今回は、子どもたちにモノづくりの楽しさや働くことの大切さを少しでも伝えたいと思っていたけれど、結局私が伝えたかったことを子どもたちから教えられた気がした。
いつまで経っても教える立場になれない私だけれど、また機会があればやってみたいなと思う。