人が教えてくることは、自分で学んだことよりも尊い気がする話。

2021年春。

コロナ禍ではあったが、お店も2年目に入り、ひとりでやっていくには少し辛い時期を迎えていた。

元々一人で営業しようと思って始めたが、人手が必要になるくらいにはなったことに、うれしい反面不安もあった。

性格的に自分勝手で、人に教える立場になったこともなかった為、一緒に働いてくれる人がいても、自分自身ちゃんとできるのかが心配だった。

かなり長い間悩んでいたが、これからを見据えてスタッフを探すことにした。

有難いことに思っていたよりも早く、やりたいと言ってくれる人が見つかった。

 

オープン当初からのお客さんで、お店のこと、ジェラートのこともよく知ってくれており、なによりも私自身のことを理解し、受け入れてくれる器の大きい人だった。

彼女が働きはじめてから早々に「なんであんなに悩んでいたんだろう」と思うくらい、私に”人を信頼して良いこと”、”一人で全部抱え込まなくて良いこと”を教えてくれた。

 

 

半年ほど経ってから、遅い歓迎会をしようと二人でご飯を食べに行った。

いろいろと話している中で、一緒に働いてくれていることへの感謝を言いつつも、いつか来るであろう退職の日のことを思い、二人で泣いた。

「まだ働き出したばかりなのに、なんでこんな話してんだろうね」と言って笑った。

 

あの日から約2年半。

新たな道を歩むため、彼女はリトルタから巣立っていった。

業種は違うが、この秋、起業するためだ。

最後にもらった手紙には、この2年間で少しずつ膨らんだ想いが記されており、胸が熱くなった。

私にとって、優秀な人材を失うことよりも、彼女が自分の力で起業したいと思ったことの方が嬉しかった。

 

1人でやっていたら、絶対にわからなかった経験をさせてもらい、私自身が彼女からたくさんの勇気をもらった2年間だった。

これからも、色々な人と関わりながらやっていけたら良いなと思う。

 

初めてチャイ味を作ったきっかけは彼女のリクエストだった
最後に食べたい味を聞いたら「チャイ」と言った
チャイが思い出の味になった