ラムレーズンの話

毎年、冬になるとラムレーズンの仕込みをしている。
ラムレーズン作りは、そんなに難しくない分、素材の良し悪しで味に大きな差が出ると思っているため、レーズンとラム酒は妥協せず厳選したものを使うことにしている。
レーズンに関しては、自分好みということもあり、毎年ウズベキスタン産の大粒のものを使っている。
このレーズンは葡萄の味も濃く、ラム酒で漬けておくと美味しいラムの香りと程よいアルコールをたっぷり吸収してくれるので、一粒でじゅわ~と濃厚なラムレーズンの味が口いっぱに広がる。
そしてラム酒は毎年違うラムを使っている。
特別詳しいわけではないけれど、色々調べて興味があるものを使ってみている。
ラム酒は、必ずアグリコール製法で作っているものを選んでいる。
アグリコール製法とは、サトウキビを絞ったジュースを煮詰めたものからラム酒にする製法で、サトウキビの搾りかすで作られる一般的なラム酒とは違い、とてもリッチなラム酒である。
もちろん、味の違いは大きく、昔カラオケ屋で飲んだラムコークとは比べ物にならないくらい美味しい。
ラムレーズン作り1年目では、カリブ海に浮かぶマルティニーク島のデパズプランテーションを使った。
オーク樽で3年熟成させたもので、すっきりとしながらも芳醇なラムの香りが感じられ、とてもバランスのよいラムレーズンに仕上がった。
2年目に選んだのは、マリーガラント島のビエールアンブレ。
バーボンの古樽で2年熟成されたこのラムは、サトウキビの風味と樽の香りがほんのり感じられ、さっぱりとした印象のラムレーズンになったと思っている。
そして3年目の今年は、少しインパクトのあるものにしたく、ネイソンのプロフィル105というラムを選んでみた。
ネイソンはマルティニーク島の中で、最も古い蒸留所で、古典的なラムを作り続けているブランドのようだが、そのネイソンが新たな挑戦として新樽で熟成させたラムが、このプロフィル105。
樽づくりの段階から入念に計算され、惜しむことなく手間をかけて作ったラムは、これまで使ったラムとはまったく別物みたいな味がした。
アルコール度数が54%というだけでなく、ピリッとスパイシーな中に甘味も感じられ、かなり個性的なラムレーズンになる気がしている。
今月初めに仕込みをしたので、2月頃には店頭に並ぶ予定だ。
アグリコール製法のラム酒は、一年に一回収穫されるサトウキビで作っている為、ワインのように作られた年によって味わいも異なるようだ。
いろいろなラム酒で作るのも楽しいけれど、同じもので毎年変化を楽しむのも良いなと思っている。
こういうことをやっていると、毎年楽しみでやめられない…
