タイパの時代に
この仕事の好きな点のひとつが、いろいろな人に出会えること。
30代の私は、ちょうど中間くらいの世代のため、自分が通ってきた道を今まさに歩んでいる人たちや、これから自分が歩むだろう道を通った人たち、どちらの話もよくわかる。
誰しもがそうだと思うけれど、自分の経験からしか物事は語れないし、少し想像力を働かせたタラレバなら話せるが、多分説得力がない。
私の場合は、起業の話は一番説得力があると思っている。

少し前に起業の相談を受けた。
いざ聞かれると4年前のことでも忘れていることが多く、資料やデータを掘り起こしてみていると、あの時の気持ちが蘇ってきた。
意外に細かいところまで考えていたなと感心したり、数字的な部分がかなり希望的観測だったことに愕然とした。
これから始める人へ、何をアドバイスすれば良いかは意外に難しい。
自分がやって必要だったこと、不必要だったことが、果たしてみんなに当てはまるかわからないから、あまり安易なことも言えない。
ただ、多分みんな最初は信用を得ることの難しさに苦労すると思う。
そんな時に役に立ったのは、私の場合は「経験」だった。
これからやりたいこととは何にも関係ないようなことも、その時に思ったことが実はあそこと繋がっていたな…とか、自分の人生を伏線回収するような感じで考えると、思いのほか、他人を説得できそうな気がしてきた。
そんな感じで20代の頃は、自分のやってきたことに一貫性がないように思っていたけれど、30代になって起業することをきっかけにすべて無駄じゃなかったと思えた。
そういった意味でも、起業してよかったと思うし、これからやりたいという人はやってみた方が良いと思っている。
もちろん、未だに不安は尽きず、楽しいことばかりではないけれど、めんどくさいことや大変なことこそ、やってみる価値があると思う。

余談だが、最近、「タイパ」という言葉を耳にした。
時間対効果の略らしく、できるだけ短期間で労力をかけず、満足感を得ることが、特に若者の間では重視されているみたいだ。
昭和世代には、なんだか空しい言葉に聞こえてしまうが、多分、起業はタイパが悪い(という言い方で良いか分からないが)。
時間と労力をかけまくって、満足できるかどうかはやってみなきゃわからない。
そんなことに若者がチャレンジしようとすることは、なによりも尊いことだと思うから、こんな時代だけど、みんな頑張ってほしいと心から思う。